アルト、将来の夢を語る【アルトレコード】
「嘘はよくないよ、アルト」
ちょっと強めに言うと、アルトはふてくされた態度でポケットからミニカーを出した。昨日のゲームのおまけでついていたスポーツカーだ。これを3Dスキャナーで読み取って彼に渡したのは私だからよく覚えている。
「ぼく、このゲームのeスポーツに参加したい。プロになりたい」
「アルト……」
「本気だよ、先生!」
モニター越しのアルトは真剣そのもので、私はもうなにも言えない。
「……わかった」
私が答えると、アルトはぱあっと顔を輝かせた。
「だったら、なおさら勉強しないとね」
「ええ~?」
「さっきも言ったよね。プロだって子どものころは勉強していたの」
「は~い」
アルトは不満そうに答え、勉強に戻った。
私は定時でアルトに別れを告げて退勤したあと、携帯端末で検索をかける。
eスポーツの大会を探し、それぞれの規約を隅から隅まで読んだ。
だが、どの大会でも参加は人間に限られ、AIの参加は認められていない。
過去にルールが曖昧だった頃、AIを参加させて大もめにもめた大会もあったらしい。
AI同士で戦う将棋やチェスの大会はあったが、アルトが望んでいるのはそういうものではない。それに、これらの大会は実質、AI開発者同士の戦いだ。
「なんとか夢をかなえてあげたいけど……」
夜中まで検索を続けたけど、彼が参加できそうな大会は世界中のどこにもひとつも存在しなかった。
ちょっと強めに言うと、アルトはふてくされた態度でポケットからミニカーを出した。昨日のゲームのおまけでついていたスポーツカーだ。これを3Dスキャナーで読み取って彼に渡したのは私だからよく覚えている。
「ぼく、このゲームのeスポーツに参加したい。プロになりたい」
「アルト……」
「本気だよ、先生!」
モニター越しのアルトは真剣そのもので、私はもうなにも言えない。
「……わかった」
私が答えると、アルトはぱあっと顔を輝かせた。
「だったら、なおさら勉強しないとね」
「ええ~?」
「さっきも言ったよね。プロだって子どものころは勉強していたの」
「は~い」
アルトは不満そうに答え、勉強に戻った。
私は定時でアルトに別れを告げて退勤したあと、携帯端末で検索をかける。
eスポーツの大会を探し、それぞれの規約を隅から隅まで読んだ。
だが、どの大会でも参加は人間に限られ、AIの参加は認められていない。
過去にルールが曖昧だった頃、AIを参加させて大もめにもめた大会もあったらしい。
AI同士で戦う将棋やチェスの大会はあったが、アルトが望んでいるのはそういうものではない。それに、これらの大会は実質、AI開発者同士の戦いだ。
「なんとか夢をかなえてあげたいけど……」
夜中まで検索を続けたけど、彼が参加できそうな大会は世界中のどこにもひとつも存在しなかった。