アルト、将来の夢を語る【アルトレコード】
「私にとってはかわいい子どもなんだけど」
「もう!」
 アルトは怒ったように頬を膨らませるが、だからといって逃げたりせずに黙って頭を撫でさせてくれている。
「……先生の手、どんな感触なのかな」
 ぼそっとアルトが言い、私は手を止めて彼を見た。
「……なんでもない」
 彼は私の手をよけるような仕草をして、だから私は手を下ろした。
「勉強、するから」
 アルトは照れ臭そうに言い、しゃがむようにして画面から姿を消した。

 私はその日もeスポーツについてネットで検索をした。
 大会の要綱だけではなく、選手のブログやニュース記事も読む。
 最初はAIに要約させた文章を読んだが、AIはこの時代になっても漏れが発生することがあるし、ハルシネーションを起こす――つまりは存在しない誤情報を生成させることがある。
 最後の細かいところはやはり人力で探したほうが、目当てのものが見つかったりするのだ。
 だから細かく言葉を変えて検索してアルトが参加できる方法を探す。
 レースゲームに限らずほかの種目でも探してみたが、やはりアルトがアルトのままで参加できそうなものはなかった。

 アルトから将来の夢を打ち明けられて数日後。
 そろそろ本当のことをアルトに話すべきだろうか。
そう思いながら研究室に入ったときだった。
「嘘つき!」
 入った瞬間になじられ、私は目を丸くした。
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