転生モブ令嬢は、死ぬ予定でした 王太子から溺愛されるなんて、誰か嘘だと言って!
 ユキリはあわあわと声にならない悲鳴を上げながら、誰にも伝えたことのない己の欲望を口にする。
 すると、殿下は呆れたようにため息を一つ溢して目を伏せた。

「君達双子は、そう言うところまでそっくりなんだね」
「え……? じゃあ、ユイガも……?」
「当たり前だろ。俺が恋愛学園に入学したのは、姉さんを守るためだ。自分のパートナーを探すためじゃない」
「で、でも! ラクア男爵家の跡取りとして、世継ぎを……!」
「俺は姉さんだけが、いればいい。他の女なんか、興味を抱けるわけがないだろう」

 姉に問われた弟も、どうやらまったく同じ気持ちだったようだ。

(ユイガは攻略対象じゃなかったし、ティナと結ばれる未来もない……。恋ラヴァでも、殿下とトラブルを起こして退学になった結末しか私は知らないから……。矛盾はしていないだろうけれど……)

 ユキリにだって、夢がある。
 それは、ティナに負けず劣らずなかわいらしい女性から、「義姉さん」と呼んでもらうことだ。

(ユイガにだっていつかは、姉離れしてもらわないと……!)
< 110 / 245 >

この作品をシェア

pagetop