転生モブ令嬢は、死ぬ予定でした 王太子から溺愛されるなんて、誰か嘘だと言って！

　彼女の秘密が露呈した以上、神殿が黙っていないからだ。

(この子は、僕のものだ）

　唯一無二の力を保護するため、聖女は神殿で過ごす決まりがあった。

　恋愛学園で自由恋愛を育む権利すら奪われ、神官が決めた男性と婚姻するか……生涯独身で居続けるか。
　進むべき道は二つに一つだ。

　マイセルとユイガは彼女を神殿に奪われたくなくて――今まで秘密を守り続けて来たが……。
　学園内ではさすがに、箝口令を敷いたところで隠し通せないだろう。
　ユキリは女子生徒からの評判が、恐ろしく悪い。
　崇め奉るべき聖女が心ない視線を向けられていると知れば、神官達はますます彼女をこちらの手元から奪い取ろうとする。
　それは容易に、想像がついた。

「ユキリちゃん……。退学に、なるんでしょうか……」

　マイセルが硬い表情で考えを巡らせていると、ティナは不安そうにユキリを見つめた。

　彼女に寄り添うロンドが明らかにユキリではなく、ティナを心配している様子には苛立って仕方なかったがーー愛する人が同じだと言われる方が困る。

　マイセルは心に決めた少女を守るため、彼らにある提案をした。

「黙っていてくれないか」