転生モブ令嬢は、死ぬ予定でした 王太子から溺愛されるなんて、誰か嘘だと言って!
(このままここにいたら、どんな目に遭うかわかんないもん……!)

 身の危険を感じ、来た道を戻ろうとした。

「このまま聖女の役目から背き、皇太子妃になるなど正気ですか!」
「痛……っ」

 だが、手首を掴まれてしまい――それは叶わなかった。
 ザルツにそう捲し立てられたユキリは、眉を顰めて拒絶する。

「離して……!」
「あなたが癒やしの力を使えば、助けられる人がいるのです!」
「私がほんとに、聖女なら! 苦しんでる人を助けたいに決まっている!」
「でしたら、なぜ……!」

 2人は押し問答を繰り広げながら、互いに悲痛な叫び声を上げる。

「でも、聖女の自由を奪って、閉じ込めるのは違うでしょ!?」
「……ユキリのためなのです」
「私はそんなこと、望んでない!」

 ユキリは聖女ルートで、ティナが口にした言葉を思い出していた。

『どうしてわたしだけが、こんな目に遭わなきゃいけないの!?』

 彼の手を取れば、そう苦しみ涙を流すティナと同じ経験をする。
 そんなの、考えたくもなかった。

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