転生モブ令嬢は、死ぬ予定でした 王太子から溺愛されるなんて、誰か嘘だと言って!
「はい! ワンツー、スリーステップ!」

 男女に分かれてダンスの授業が始まると、ユキリは教師からの熱血指導に耐え切れずヘロヘロになっていた。

「こら! そこ! 真面目にやる!」

 ーー些細なステップのミスや指先の位置まで指導してくる教師に、何度指摘を受けたかなど考えたくもない。

(困ったなぁ……)

 ユキリはモブだが、貴族の端くれだ。本来であれば、社交ダンスも朝飯前のレベルでなければならない。

(苦手なんだよね……)

 しかし、前世の常識に引っ張られているせいか。
 絢爛豪華なドレスを纏ってフロアで優雅に異性と密着して踊るのが、どうしても受け入れられなかった。

(ロンティナのダンスは、間近で見たいけど……!)

 男性と手を取り合って自らもドレスを翻して踊るなど、考えたくもない。
 そんなユキリは、根っからのパーティー嫌いだった。

(なんで強制なの……!? あんたには踊る資格がないって、見学を言い渡してくれたらいいのに……!)

 このままでは相当努力しなければ、まともになど踊れない。
 そう考えるだけでも辟易してさらにやる気がなくなり、思わず教師を睨みつけてしまう。
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