転生モブ令嬢は、死ぬ予定でした 王太子から溺愛されるなんて、誰か嘘だと言って!
「帰ろっか……。あれ? ユキリちゃん?」
「そっとしてやれよ。疲れたんだろ」
「で、でも……」
「ユイガ達、早く来ねぇかな……」
「うん。そうだね……」

 ロンドとティナが話す内容を聞きながら、ユキリは自分の意識がどんどんと遠のいていくのを感じた。

(卒業まで、あと2年半もあるけど……。私は殿下との婚約を発表したら、ひと足早く卒業しないといけないんだよね……)

 ロンドとティナの会話を間近で見られる機会も、数えられるほどしかない。少しでも長く堪能するために、疲れて眠っている場合ではないとわかっているのに……。ユキリは眠気に抗いきれず、うとうと微睡む。

(私が殿下に見初められるなんて、天と地がひっくり返ってもあり得ない出来事だもん。本当はそれを素直に喜んで、受け入れるべきだよね……)

 自分が聖女だと露呈しても、ユイガとともに五体満足で生きてこられたのは――マイセルのおかげだ。
 そう思えば、今まで頑なに拒絶し続けていた彼に対する気持ちも変化する。

(今まで、拒絶し過ぎたかな……)

 少しだけ反省したユキリは彼を恋愛対象外としてではなく、異性として見るべきなのではないかと考え直し、深い思考から意識を浮上させた。すると――。
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