転生モブ令嬢は、死ぬ予定でした 王太子から溺愛されるなんて、誰か嘘だと言って!
「ごめんなさい……」
「1人の時は、ぼーっとしていたら駄目だよ」

 マイセルは幼い子どもに言い聞かせるようにこちらへ声をかけると、細い身体を優しく抱きしめた。

「無事でよかった」

 彼の口から紡がれた安堵の声を耳にしたユキリは、自分が思っている以上に自分が殿下から大切にされているのだと気づき、愕然とした。

(私は今まで……。どうしてあれほど頑なに、彼の気持ちを拒否し続けていたんだろう……?)

 自分でも不思議に思うほどに失礼なことをしてきた。
 その自覚が一度でも湧いたら、駄目だった。

(私に対する殿下の気持ちは、どこからどう見ても本物なのに……)

 ユキリには前世から生まれ変わった今に至るまで、誰かを好きになった経験がない。
 ユイガには好意を向けられてきたが、彼は弟だ。
 恋愛対象外である以上、カウントするべきではないだろう。

(私を好きになってくれた、初めての人……)

 なんの取り柄もなく、存在感もない。
 こんな自分を愛し、守ろうとしてくれる人をーー嫌いになるほうがおかしいのだ。

(私は殿下を、好き……。なのかな……?)

 自分自身に問いかけても、しっくり来るような答えは導き出せなかった。
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