転生モブ令嬢は、死ぬ予定でした 王太子から溺愛されるなんて、誰か嘘だと言って!
 ザルツの言葉を耳にした学生達が不安に駆られてパニックに陥り、出口へと走る。

「助けて! 誰か……!」

 ――そんな中。

 ティナに寄り添ったランカはユキリと目を合わせ、声を張り上げ懇願した。

「ティナ……!」
「待って」

 彼女はすぐさまティナへ駆け寄ろうとするが、マイセルに止められてしまう。

「罠だよ。絶対に行っちゃ駄目だ」
「でも……!」

 ユキリがこのまま何もせず、ティナが命を落とすことがあれば……。自分で自分が、許せなかった。

(ティナを、助けなきゃ)

 恋ラヴァのヒロインがこんなところで命を落とすわけがないと、わかっていても。
 居ても立っても居られないからこそ――癒やしの力を発動させてしまった。

「ユキリ……!」

 殿下がこちらの名を叫んで、必死に止めようとする声が聞こえる。
 そんな中、ユキリは見てしまった。

(あれは……)

 視界の端でルアーナ公爵令嬢が口元を緩め、歪な笑みを浮かべる瞬間を――。

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