転生モブ令嬢は、死ぬ予定でした 王太子から溺愛されるなんて、誰か嘘だと言って!
「この光は……!」
「癒やしの力だ!」
「じゃあ、ユキリさんって……」
「聖女?」
「静まれ! 姉さんを、見るな……!」

 困惑した様子でこちらを見つめる生徒達から守るように、弟が両手を広げて立ち、怒声を響かせる声を聞きながら。
 ユキリは不安そうに、床へ倒れ伏すティナの姿を観察していた。

「ん……」
「ティナ!」

 聖女の治癒を受けたティナは、閉じていた瞳をゆっくりと開いた。
 押さえつけていたザルツの手から強引に逃れたロンドは彼女を抱きしめ、無事を確認すると安心したように涙を流す。

(よかった……)

 ユキリは推しの無事を確認して、ほっと胸を撫で下したが……。
 これで全てが、終わるわけではない。

(あとは、私の問題をどうにかしなくちゃ)

 聖女だとこの場にいる全員にバレてしまった以上、予定通り彼の婚約者だと名乗り出るのは難しい。

 ここからどうやって、今まで通りの生活を勝ち取ればいいのかなど、ユキリには考えもつかない。
 しかし……。

(無理なんて言ってる時間が、もったいないよ……!)

 覚悟を決めたユキリは、現状を受け入れ――運命に立ち向かう覚悟を決めた。
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