転生モブ令嬢は、死ぬ予定でした 王太子から溺愛されるなんて、誰か嘘だと言って!
 それを耳にした殿下は、不自然に止まった言葉の続きを促した。

「他には? 何か、言うことはないの?」

 マイセルがこちらの口から、愛の言葉が紡がれるのを待ち望んでいるとわかっていても――ユキリはそれを、声に出す覚悟が出来ていなかった。

(この想いを言葉にしたなら。彼は私に執着して、取り戻そうと必死になるはず……)

 彼の運命の相手は、ユキリではない。
 けれど、ティナにはロンドと結ばれてほしい。
 今までたくさんお世話になったからこそ、殿下には幸せになってほしかった。

 そんな矛盾した想いを、抱いているからこそ――。

(彼が素敵なご令嬢と、巡り会えるように。突き放すなら、今しかない)

 これ以上、彼が期待をするような言葉を口にしてはいけないと心を鬼にして、殿下を傷つけるような言葉ばかりを並べ立てた。

「私はどうやっても、殿下を好きにはなれなかったんだ……」
「ユキリ」
「嫌いだよ。顔も見たくない……」
「聖女だって露呈したことを気にしているのなら、問題ないよ」
「私は聖女として、生きていく。そう、決めたんだ。だから……」

 ユキリは胸が張り裂けそうな程の苦しみを抱きながら、唇を噛みしめることでその悲しみをぐっと堪え――。
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