転生モブ令嬢は、死ぬ予定でした 王太子から溺愛されるなんて、誰か嘘だと言って!
「聖女様」

 ユキリが自室のベッドに腰を下ろした直後、ザルツが姿を見せた。

(彼が言葉を紡ぐ前に、本題へ入らなくちゃ……!)

 そんな強い決意を胸に秘め、先手必勝とばかりに声を発する。

「病弱な弟さんを、助けたいんだよね?」
「聖女様、一体何を……」
「私に任せて!」
「しかし……」

 ザルツは長い間逡巡していたが、神殿内において聖女の言葉は絶対である。
 結局背に腹は代えられないと考えたらしい。

「こちらです」

 彼はユキリを手招き、ある場所へと連れ出してくれた。
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