転生モブ令嬢は、死ぬ予定でした 王太子から溺愛されるなんて、誰か嘘だと言って!
「ユキリちゃんは、渡しません!」
「ティナ!?」
「わたし達と、ずっと一緒にいるんです……!」

 この危機的状況へ真っ先に立ち向かったのは、瞳を釣り上げ怒り狂うティナだった。
 まさかモブの自分が、恋ラヴァのヒロインに庇われるなど思いもしない。

(私、今なら死んでもいい……!)

 ユキリの瞳からは、感動で自然と涙がこぼれ落ちた。

「大丈夫だよ! 絶対わたしが、殿下に会わせるからね……!」

 ユキリの方を振り返ったティナは、神殿に連れ戻されるんじゃないかと不安に思って涙を流しているのだと勘違いしたようだ。

(乙女ゲームのヒロインは、やっぱりこうでなくちゃ!)

 普段は可憐な容姿に隠されているが……。
 攻略対象や自身がピンチに陥った直後、芯の強さを発揮する。
 そうしたギャップに誰もが魅了され、虜になるのだ。

(はぁ……。尊い……)

 一触触発な空気で睨み合うティナと神官達の姿を目にしたユキリが、まさかヒロインが神殿の人間を睨みつける姿にときめいて嬉し涙を流しているなど、思いもしないからだろう。
 彼らは互い一歩も引かずに、言い争いを続けていた。
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