転生モブ令嬢は、死ぬ予定でした 王太子から溺愛されるなんて、誰か嘘だと言って!
(だから……っ! こういうアプローチは、私じゃなくてティナにやってよ……!)

 叫び出したい気持ちでいっぱいになったユキリは、上半身を仰け反らせて彼を拒絶する。

「い、いえ……っ! だ、大丈夫です!」
「な……。まさか、本当に……?」

 思った以上に大きな声が出たと安堵していれば、遠くから呆然とした言葉が聞こえてきた。
 そちらへ視線を向ければ、そこにはいつの間にか姿を見せていた父が立っていた。

「し、信じられない……。これはまさしく、奇跡だ……!」

 男爵は全身を小刻みに震わせて歓喜の涙を瞳から流すと、声を張り上げた。

「ユイガも喜ぶぞ!」
「お、お父さん……」
「殿下がユキリにとって、運命の相手なのは間違いようのない事実です。早急に家族会議を行い、後日その結果をお伝えさせていただきます」
「へ……っ!?」

 父親の発現を耳にしたユキリは、素っ頓狂な声を上げて驚いた。
 殿下の運命の相手は、自分ではなくティナだと知っていたからだ。
< 22 / 245 >

この作品をシェア

pagetop