転生モブ令嬢は、死ぬ予定でした 王太子から溺愛されるなんて、誰か嘘だと言って!
 マイセルは肩を竦めると、ユキリから少しだけ距離を取る。
 気の立っているユイガと一緒にいたら、自分の身が危ないと感じ取ったのかもしれない。

「仕方ないから、今日は君の言うことを聞いてあげるよ」
「二度とこの部屋に、顔を出すな……!」
「えー? やだ」

 殿下は爽やかの笑みを浮かべると、ひらひらと手を振って部屋を出て行った。

(ようやく、落ち着けるよ……)

 家族みんなで装飾品を買いに行ったあとから今に至るまで、いろんなことが起こりすぎて疲れてしまった。

「あいつは、何もわかっていない……。もしも護衛を断り、馬車に乗っていたら……。俺達は、死んでいたかもしれないんだぞ……!」

 そんな弟の声をぼんやりと聞きながら、ボスンと音を立てて背中からベッドにダイブする。

(ふかふかだ……。さすがは王城の客間……。最上級って感じがするよ……!)
< 54 / 245 >

この作品をシェア

pagetop