転生モブ令嬢は、死ぬ予定でした 王太子から溺愛されるなんて、誰か嘘だと言って！

　これからここで暮らせるなんて、夢のようだ。
　ユキリは瞳を細めながら、眠そうな声でユイガに話しかけた。

「殿下のおかげで、みんなが助かったんだよ？　そんなに敵視しなくたって、いいんじゃないかな……」
「姉さん！　もう、あんな男に絆されたのか!?」
「そう言うわけじゃないけど……。一応、助けてもらったし。ちゃんと、お礼くらいは言わないと駄目でしょ」
「だが……っ！」
「じゃあ、ユイガには……。双子のよしみで、とっておきの秘密を教えてあげようかな？」

　一体なんの話だと訝しげな視線をこちらに向けた弟は歩みを進め、恐る恐るベッドの縁に腰かけた。
　ようやく怒りを沈めて話を聞く体制になってくれたかと安心しながら、ユキリは語り始める。
　墓場まで持っていこうと思っていた、自身の秘密を。

「あのね。私、未来が見えるの。殿下はミルクティブロンドの長い髪を揺らして優しく微笑む女の子と、恋愛学園で出会って好きになるんだ」
「恋愛学園……？　それって、15歳まで一度も恋をしたことのない貴族達が通う学校だろ？　あいつはユキリと、婚約したがっているのに……」
「だから、心配いらないよ。私達はみんなで一緒に、恋愛学園へ通うんだから」