転生モブ令嬢は、死ぬ予定でした 王太子から溺愛されるなんて、誰か嘘だと言って!
「あ、ぁ……! 姉さんが、汚れてしまった……!」
がっくりと項垂れ絶望した様子でその場に崩れ落ちた弟を無視して、小刻みに小さな布を動かしていると――あることに気づいて不思議そうな声を上げた。
「ここ、血が出てる……」
わざわざ治療するまでもないが、何かに引っかかれたような傷が頬に山程刻み込まれている。
(服で隠れるところが傷つくのは、仕方ないけど……。いくら訓練だとしても、これはよくないよね?)
そう考えたユキリが、そこを優しく撫でつけた時だった。
再び眩い光が迸り、彼の傷が癒えたのは。
「あ」
ここは王城の鍛錬場だ。
当然、ひと目がある。
マイセルは露骨にまずいと言わんばかりの顔をすると、上半身裸であることも忘れてユキリを抱きしめた。
「な……! どさくさに紛れて、俺の姉さんに触れるなど……! 貴様! 命が惜しくないのか!?」
「今はそんな話をしている場合じゃない。それくらい、わかるだろ」
「だが……っ」
「バゼラ。今起きたことは、他言無用だよ」
「し、しかし……!」
「いいね?」
「う……。しょ、承知いたしました……!」
がっくりと項垂れ絶望した様子でその場に崩れ落ちた弟を無視して、小刻みに小さな布を動かしていると――あることに気づいて不思議そうな声を上げた。
「ここ、血が出てる……」
わざわざ治療するまでもないが、何かに引っかかれたような傷が頬に山程刻み込まれている。
(服で隠れるところが傷つくのは、仕方ないけど……。いくら訓練だとしても、これはよくないよね?)
そう考えたユキリが、そこを優しく撫でつけた時だった。
再び眩い光が迸り、彼の傷が癒えたのは。
「あ」
ここは王城の鍛錬場だ。
当然、ひと目がある。
マイセルは露骨にまずいと言わんばかりの顔をすると、上半身裸であることも忘れてユキリを抱きしめた。
「な……! どさくさに紛れて、俺の姉さんに触れるなど……! 貴様! 命が惜しくないのか!?」
「今はそんな話をしている場合じゃない。それくらい、わかるだろ」
「だが……っ」
「バゼラ。今起きたことは、他言無用だよ」
「し、しかし……!」
「いいね?」
「う……。しょ、承知いたしました……!」