転生モブ令嬢は、死ぬ予定でした 王太子から溺愛されるなんて、誰か嘘だと言って!
 彼はそれが残念で堪らなかったようだ呆れたように肩を竦めて、苦言を呈する。

「ユイガは野蛮で、横暴な男性に育ちそうだね……」
「誰のせいでこんなふうになったと思っている……! 俺は姉さんを奪おうとする輩さえいなければ、大人しい紳士だ!」
「そうやって思いたいだけじゃない? 今のところ、欠片もそんなふうに見えないけど……」
「貴様は俺を怒らせるのが、本当に好きなようだな……!」

 相手が王族であったとしても、ユイガにとってマイセルは自分から姉を奪う敵でしかない。
 彼は怒声を響かせると、売られた喧嘩を買った。

「ちょ、ちょっと待って。落ち着こう? 2人はここで、鍛錬をしてたんだよね?」
「うん。そうだよ」
「足元の血溜まりは、一体……」

 それを見かねた姉は、すぐさま待ったをかける。
 彼らは争いの原因となったユキリの質問に答えると、一触触発な空気を霧散させた。

「ああ、これ? ユキリに言い寄る屈強な男たちに、ユイガが斬り伏せたせいだよ」
「俺だけじゃない! こいつだって、ノリノリで退けていた!」
「僕達って、案外相性はいいみたいでね。
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