転生モブ令嬢は、死ぬ予定でした 王太子から溺愛されるなんて、誰か嘘だと言って！

「ユキリはあの女の想いに僕が応えれば、全部が丸く収まると思っているみたいだけど……」
「うん……」
「僕はこの国で2番目に尊ばれるべき、王太子だよ？　なんで公爵令嬢なんかの気持ちを優先しなきゃいけないんだい？」
「でも……！」
「この国のルールは、父上と僕が決めるのに」

　2人の主張を比べれば、どちらが正しいかなど一目瞭然だ。
　ユキリは反論できずに、言葉を詰まらせた。

「誰かの犠牲の上に成り立つ幸せを手に入れて、ユキリはそれを気にせずに暮らせるの？」
「それは……」
「僕が君を守るために、苦しむ姿こそが至高なんて言わないよね？」
「女王様じゃないんだから……。そんなふうには、思わないよ……！」
「よかった。僕の目に、狂いがなくて」

　ここでそう思っていると言えば、何かが変わったのだろうか？
　安心したように微笑むマイセルの姿を見て、すぐさま自分が返答を間違えたと気づく。しかし、今さら撤回などできるはずもなく……。

「あの女を野放しにしているせいで、男爵の心労が耐えないこと。僕も申し訳なく思っているよ」
「だったら……！」
「だけど……。君達双子は誰かの手ではなく、自分達の力で、蹴りをつけたいタイプだろう？」
「それ、は……」