転生モブ令嬢は、死ぬ予定でした 王太子から溺愛されるなんて、誰か嘘だと言って！

　彼に望まれたユキリは、どうしてもマイセルを遠ざけたくて――殿下を傷つける言葉を口にした。

「君は僕を苛立たせる、天才なのかもしれないね」
「あ……」

　どこか寂しそうに目元を緩めた王太子を目にして、傷つけてしまったと反省する。
　だがその反応は、彼にとってはユキリの心の隙間に入り込む絶好の機会でしかなかった。

「これ以上僕を拒絶するなら、無理やり婚約を結んでしまうよ」
「や……っ！」
「僕だって、ユキリの嫌がることはしたくないよ。でも、これは君が悪いんだ。こんなにも愛して、大切にしているのに――その想いが、１ミリも伝わっていなかったんだから」

　マイセルはこちらに向ける狂愛を見え隠れさせると、今にも唇が触れ合いそうなほどに口同士を近づけた。

「それに気づいた僕の絶望。どうしてくれるの……？」
「で、殿下……っ。お、落ち着いて……！」
「僕は冷静だよ」
「う……！」