転生モブ令嬢は、死ぬ予定でした 王太子から溺愛されるなんて、誰か嘘だと言って!
(生ティナだ! 超かわいい……!)

 ユキリにとってこの少女は、恋ラヴァの中で一番大好きな登場人物ーーいわば、推しだ。

(推しと同じ世界で暮らせるなんて、夢みたい……!)

 大好きな人が同じ世界で生きている。
 それだけでユキリは、天にも登るような気持ちになれた。

(ここに来るまで、いろいろあったけど……! 生きててよかった……!)

 一体この光景のどこが面白いんだと言わんばかりの顔をする弟を横目に――ユキリは喜びの涙を瞳からポロポロと流すと、彼女の隣に佇む男子生徒へ注目する。

「なんでオレが、こんなところに……」

 そうぼやくのはティナの幼馴染。
 恋ラヴァのメインヒーロー、ロンド・セクシスだ。

 彼の特徴はなんと言っても、燃え盛る業火のような赤髪。
 そして、ティナとお揃いのミルクティ色の瞳だろう。
 めんどくさがりではあるが、彼女を誰よりも深く愛する姿は誰にも負けない。

(幼馴染組、尊すぎ!)

 ユキリはその場で、木の陰に隠れて2人の姿を拝み倒した。

「姉さん……? 何をしているんだ……」

 その姿に目を見張ったのは、通行人をただ眺めているだけに飽きたユイガだ。彼は瞳から涙を流して両手を合わせる姉を見て、聖女の力を暴走させたと勘違いしたらしい。
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