転生モブ令嬢は、死ぬ予定でした 王太子から溺愛されるなんて、誰か嘘だと言って!
「静かにして! 今、いいところなの!」
「はぁ……?」

 ユキリに小声で怒鳴りつけられる理由がわからず、彼は理解に苦しむ。
 そんな弟を気にする理由など、残念ながら今の姉には存在しなかった。
 なぜならば――。

「ティナ」
「どうしたの?」

 恋ラヴァのシナリオは、一時停止などできずに進んでいくからだ。
 長い髪を風に靡かせたティナがロンドの言葉を受けて振り返れば、彼が幼馴染に顔を近づける。

(これは! 伝説の……!)

 ゴクリと生唾を飲み込んだユキリが目にしたものはーー。

「じっとしてろ」

 浅倉雪莉がロンティナに目覚めるきっかけとなった、ロンドの初イベント。
 額の上に付着してしまった桜の花びらを唇で取り除くシーンだった。

(推しカップルが、結婚した……)

 感動して腰が抜けたユキリは、その場にストンと崩れ落ちた。

(なんで、あの2人は幼馴染で……。付き合っていないの……?)

 創造主が与えた試練に、怒りを覚えた瞬間ーー。

「きゃあ!」

 金髪縦ロールの少女がロンドに背中からぶつかり、2人の邪魔をした瞬間を目撃する。
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