転生モブ令嬢は、死ぬ予定でした 王太子から溺愛されるなんて、誰か嘘だと言って!
「おい。姉さん。あれ……」
「嘘でしょ……?」

 その異変には、隣の弟もすぐに気づいた。
 ――双子が露骨に顔を顰めたのも、無理はない。

(私達を始末しようと目論んだ挙げ句、推しカップルの邪魔をするなんて……!)

 ユキリはロンティナの成立を阻む敵が現れたと内心怒り狂い――。

「あの女……」

 今まで散々身勝手な想いを成就させるため、愛する姉を傷つけようと目論んでいたのだ。
 その恨みを晴らすべく、虎視眈々と機会を窺っていたユイガは今こそが好機だと胸元から隠し持っていた折たたみ式のナイフを取り出す。

「ちょ、ちょっと待って! ストップ! ユイガ! ロンティナの前で、流血沙汰は駄目……!」
「離してくれ! 姉さん! 俺はこの時のため、鍛錬を積んできたんだ……!」

 ルアーナの公爵令嬢に憎悪を抱きすぎて目が血走っている弟にしがみついたユキリは、必死に彼を止めた。

「大丈夫?」

 そうこうしている間に、ティナが優しく微笑んでランカに手を差し伸べる。
 その姿を目にして、ユキリは誇らしい気持ちでいっぱいになった。

(さすがは私のティナね!)

 慈愛に満ち溢れるヒロインの姿に感動すれば、ルアーナ公爵令嬢は露骨に嫌そうな顔をしてティナの手を弾く。
< 85 / 245 >

この作品をシェア

pagetop