転生モブ令嬢は、死ぬ予定でした 王太子から溺愛されるなんて、誰か嘘だと言って!
 悪役令嬢と言う乙女ゲームには存在しない謎の悪役キャラを主人公に、乙女ゲームに転生して性悪キャラになったヒロインを断罪する二次創作を目にしたことがあったからだ。

(私のかわいいティナを、心の穢れた女の子として描写するなんて……! ああ、思い出すだけでもイライラする……っ!)

 そうした悪役キャラは、ルアーナ公爵令嬢のように勝ち気なお嬢様の設定が多かった。
 ユキリと言う転生の前例がある以上、目の前にいるヒロインがティナの顔をした化物である可能性も否めない。

(うぅ……。でも、私はティナを信じたい……! 誰かが成り代わってるのなら、さっきのシーンで本性を表していたはずだもの……!)

 ユキリはブンブンと首を横に振って二重の意味で否定をすると、震える指先を動かした。

「これも、何かの縁だよね……。その、よければ……」
「もちろん! これから、よろしくね!」

 友達になって欲しいと伝えなくても、ティナは満面の笑みを浮かべてこちらの差し出した手を握り返してくれた。

(お、推しと! 友達に、なっちゃった……!)

 傍観者に徹する予定が、友達になってしまった。
 これはとんだ誤算だ。

 嬉しくもあり、恋ラヴァでは語られなかった行動を起こして大丈夫なのかと不安になりながらも、ユキリは何度も頷いた。

 2人の姿を、不貞腐れた様子で見つめるロンドに気づかぬまま……。
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