アルトと歩む未来【アルトレコード】
 そして、全員が手首にオレンジのブレスレットをしている。もうひとりの……最初のアルトの印。私たちにとっての喪章。

 授賞式に出られるアルトは四人だけど、彼の犠牲なくしては語れない。彼が身を挺してくれたから、今があるのだ。

 私もまた振袖にオレンジを取り入れていた。帯締めのファイアオパール、彼の瞳のような輝きを宿した宝石だ。

「北斗さんはまだなんだね」
「もうすぐ来ると思うよ。車に乗って待ってようよ。お先にどうぞ」
 かわいく言うアルトの言葉に頷き、私は車に乗り込む。続いて乗り込もうとした彼を、別のアルトが止めた。

「待てよ、なんで普通に先生の隣に乗ろうとしてるんだ?」
 オレンジの瞳を細め、アルトが咎める。
「え?」
 アルトがかわいく首を傾げてとぼける。

「さらっと当然のように、ずるくねーか」
 アルトが赤い目でアルトを見据える。
「先生の隣には俺が座りたい。昨日の論文について話したいことがあるんだ」
 クールな立ち姿でアルトが言う。

「えっと……」
 私は困ってしまった。
「みんな、お待たせ!」
 声がして、みんなが一斉にそちらを向く。そこにいたのは北斗さんだ。

 北斗さんもまた濃紺のスーツ姿だった。グレーのネクタイが渋くてかっこいい。オレンジのブレスレットをつけた手にはベガさんが入っていると思われる端末があった。そのカバーには一筋のオレンジのラインが入っている。
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