25年ぶりに会ったら、元・政略婚相手が執着系社長になってました
彼が連れてきてくれたのは、駅から少し離れた静かな路地に佇む、隠れ家のようなイタリアンレストランだった。
店内はカジュアルながら落ち着いた雰囲気で、木の温もりを感じるインテリアに、やわらかな照明。テーブル間も広く取られていて、ゆったりと会話と食事を楽しめる空間だった。
「何が食べたい?」
メニューを開いたまま、あれこれと迷っている美和子に、真樹がやわらかく声をかける。
「どれもおいしそうで、決めきれません……」
「じゃあ、いくつか頼んでシェアしよう。飲み物は?お祝いにふさわしいものを選んでくれ」
「お酒はあまり詳しくなくて……お任せしてもいいですか?」
「もちろん。料理に合うワインを、ソムリエに選んでもらおう」
真樹は慣れた様子でスタッフに声をかけ、前菜、ピザ、パスタを数種注文した。
「そんなに頼んで大丈夫なんですか?」
「ここは一皿ごとの量が少なめで、いろいろ楽しめる。だから気に入ってるんだ」
そう言いながらグラスを手にする真樹の姿に、どこか余裕とやさしさが感じられる。
「部下にはもう帰ってもらったから、時間はたっぷりある。明日は休みだし、ゆっくり食べよう」
「私も……休みです。じゃあ、お言葉に甘えて」
ふっと笑顔を見せる美和子。その笑顔に、真樹の心が大きく波打つ。
——ああ、かわいいな。たまらない。
「それで……引っ越しは、いつする予定なんだ?」
「そうですね……なんだか、早く引っ越したくなったので……3週間後にしようかしら」
「……そうか」
(なら、俺も急がないとな)
「引っ越し業者は、もう決めてる?」
「いえ、これからですね。でも、佳奈が出て行ってから、けっこう処分しちゃったんです。新しいスタートにしたくて……もしかしたら、家具も全部、新しく買っちゃうかも」
照れ笑いまじりにそう言う彼女に、真樹はすかさず提案する。
「知り合いのインテリアデザイナーを紹介しようか?」
「うーん……今回はシンプルに、自分で家具屋さんを見てみようと思ってて」
「いつ行くつもりだ?」
「そうね……来週くらいから、少しずつ見始めようかしら」
「じゃあ、日曜日の11時はどうだ?車で迎えに行く」
「え?でも……」
「どうして?って顔してるな。立て込んでた仕事がようやく片付きそうなんだ だめか?」
「……だめじゃ、ないですけど……」
「じゃあ、決まりだ。日曜日が楽しみだな」
——また、流されてる。
そう思う自分もいる。
けれど、不思議と——いやな感じがしない。
それどころか、どこか懐かしい安心感すらあった。
運命は、時に唐突で、
でも確実に、何かを動かしていく。
この夜が、その始まりだった。
店内はカジュアルながら落ち着いた雰囲気で、木の温もりを感じるインテリアに、やわらかな照明。テーブル間も広く取られていて、ゆったりと会話と食事を楽しめる空間だった。
「何が食べたい?」
メニューを開いたまま、あれこれと迷っている美和子に、真樹がやわらかく声をかける。
「どれもおいしそうで、決めきれません……」
「じゃあ、いくつか頼んでシェアしよう。飲み物は?お祝いにふさわしいものを選んでくれ」
「お酒はあまり詳しくなくて……お任せしてもいいですか?」
「もちろん。料理に合うワインを、ソムリエに選んでもらおう」
真樹は慣れた様子でスタッフに声をかけ、前菜、ピザ、パスタを数種注文した。
「そんなに頼んで大丈夫なんですか?」
「ここは一皿ごとの量が少なめで、いろいろ楽しめる。だから気に入ってるんだ」
そう言いながらグラスを手にする真樹の姿に、どこか余裕とやさしさが感じられる。
「部下にはもう帰ってもらったから、時間はたっぷりある。明日は休みだし、ゆっくり食べよう」
「私も……休みです。じゃあ、お言葉に甘えて」
ふっと笑顔を見せる美和子。その笑顔に、真樹の心が大きく波打つ。
——ああ、かわいいな。たまらない。
「それで……引っ越しは、いつする予定なんだ?」
「そうですね……なんだか、早く引っ越したくなったので……3週間後にしようかしら」
「……そうか」
(なら、俺も急がないとな)
「引っ越し業者は、もう決めてる?」
「いえ、これからですね。でも、佳奈が出て行ってから、けっこう処分しちゃったんです。新しいスタートにしたくて……もしかしたら、家具も全部、新しく買っちゃうかも」
照れ笑いまじりにそう言う彼女に、真樹はすかさず提案する。
「知り合いのインテリアデザイナーを紹介しようか?」
「うーん……今回はシンプルに、自分で家具屋さんを見てみようと思ってて」
「いつ行くつもりだ?」
「そうね……来週くらいから、少しずつ見始めようかしら」
「じゃあ、日曜日の11時はどうだ?車で迎えに行く」
「え?でも……」
「どうして?って顔してるな。立て込んでた仕事がようやく片付きそうなんだ だめか?」
「……だめじゃ、ないですけど……」
「じゃあ、決まりだ。日曜日が楽しみだな」
——また、流されてる。
そう思う自分もいる。
けれど、不思議と——いやな感じがしない。
それどころか、どこか懐かしい安心感すらあった。
運命は、時に唐突で、
でも確実に、何かを動かしていく。
この夜が、その始まりだった。