25年ぶりに会ったら、元・政略婚相手が執着系社長になってました
駐車場を出た車の中。
夕方の光がフロントガラス越しに差し込み、車内を柔らかく染めていた。
「好きなもの、買えたか?」
ハンドルを握りながら真樹が聞いてきた。
「はい。いろいろ見られて楽しかったです」
「そっか。俺は欲しかった本はなかったけどな」
「そうだったんですね……残念」
「でも、読みかけの小説が面白くてさ。ああいう時間も、たまには悪くないな。デパートの本屋も案外いい」
「うん、ですね。気分転換になりますよね」
助手席でふわりと微笑む美和子の横顔を見ながら、真樹はふいに聞いた。
「で、どんなの買ったんだ?」
「え……?」
「下着」
「っ……」
一瞬で心拍数が跳ね上がった。
「えーと、ピンク……赤系ですね……」
返してから、美和子は「しまった」と心の中で叫んだ。
なに言ってるの、私!?なんで素直に答えちゃったの!
真樹はハンドル越しににんまりと笑う。
「ふーん、そうなんだ」
言葉はそれだけだったけれど、その視線はあまりにも意味ありげで。
いたずらを仕掛けた男の子のような、でも確かに大人の男の熱がそこにあった。
「もう……やだ……!」
美和子は顔を真っ赤にして、思わず顔を手で隠した。
「いや、似合うと思うよ。ピンクも赤も、君にはきっと」
その声はやさしくて、でもどこか艶やかで。
助手席の小さな紙袋の中にある秘密を、見透かされているような気がしてならなかった。
窓の外に流れる街の景色が、さっきよりも少し、色鮮やかに見えた。
「昼飯、食い損ねたな」
ハンドルを握ったまま、真樹がぽつりと言う。
「そうですね。朝が遅かったから、おなか空かなかったし」
「夕飯にはちょっと早いが……何か食べようか。なにがいい?」
美和子は少し考えてから、顔を明るくして言った。
「マンションの近くのラーメン屋がいいです。あの、人気の餃子も食べたい。……今、想像したらおなか空いてきちゃいました」
「○○軒のこと?」
「はい、そうです。いつも混んでて気になってたんです」
真樹は笑ってうなずいた。
「よし、いったん帰って荷物置こう。俺ももうちょっとラフな格好に着替えたいし」
「そうですね。油とか、洋服につく匂い、ちょっと気になりますし」
買い物袋をそれぞれの部屋に運び、一息ついたあと、ふたりはマンションのエントランスで落ち合った。
真樹はジーンズに着替え、カジュアルなパーカースタイル。
美和子も軽やかなシャツワンピにスニーカーを合わせて、どこか学生のような無防備さがあった。
「じゃ、行こうか」
並んで歩く道は、あたたかな夕陽に照らされている。
マンションの影がゆっくりと長く伸び、オレンジ色の光がふたりの横顔を優しくなぞった。
風が少し涼しくて、だけど心はほのかにあたたかい。
会話はとりとめのないもの。
今日は歩きすぎたとか、試着室の鏡が意外と正直だったとか、
餃子はやっぱりニンニクがある方がいいよね、とか。
そんな何気ないやりとりが、
なぜか胸の奥をじんわりと、柔らかくしていく。
歩くたびに寄り添うように揺れるふたりの距離。
日常の一コマに溶け込む恋心が、そっと芽吹き続けている。
そして、角を曲がると、目当てのラーメン屋の暖簾が見えた。
「……あ、ちょうど空いてるかも」
「タイミングいいな」
ふたりは目を見合わせ、ふっと笑った。
夕方の光がフロントガラス越しに差し込み、車内を柔らかく染めていた。
「好きなもの、買えたか?」
ハンドルを握りながら真樹が聞いてきた。
「はい。いろいろ見られて楽しかったです」
「そっか。俺は欲しかった本はなかったけどな」
「そうだったんですね……残念」
「でも、読みかけの小説が面白くてさ。ああいう時間も、たまには悪くないな。デパートの本屋も案外いい」
「うん、ですね。気分転換になりますよね」
助手席でふわりと微笑む美和子の横顔を見ながら、真樹はふいに聞いた。
「で、どんなの買ったんだ?」
「え……?」
「下着」
「っ……」
一瞬で心拍数が跳ね上がった。
「えーと、ピンク……赤系ですね……」
返してから、美和子は「しまった」と心の中で叫んだ。
なに言ってるの、私!?なんで素直に答えちゃったの!
真樹はハンドル越しににんまりと笑う。
「ふーん、そうなんだ」
言葉はそれだけだったけれど、その視線はあまりにも意味ありげで。
いたずらを仕掛けた男の子のような、でも確かに大人の男の熱がそこにあった。
「もう……やだ……!」
美和子は顔を真っ赤にして、思わず顔を手で隠した。
「いや、似合うと思うよ。ピンクも赤も、君にはきっと」
その声はやさしくて、でもどこか艶やかで。
助手席の小さな紙袋の中にある秘密を、見透かされているような気がしてならなかった。
窓の外に流れる街の景色が、さっきよりも少し、色鮮やかに見えた。
「昼飯、食い損ねたな」
ハンドルを握ったまま、真樹がぽつりと言う。
「そうですね。朝が遅かったから、おなか空かなかったし」
「夕飯にはちょっと早いが……何か食べようか。なにがいい?」
美和子は少し考えてから、顔を明るくして言った。
「マンションの近くのラーメン屋がいいです。あの、人気の餃子も食べたい。……今、想像したらおなか空いてきちゃいました」
「○○軒のこと?」
「はい、そうです。いつも混んでて気になってたんです」
真樹は笑ってうなずいた。
「よし、いったん帰って荷物置こう。俺ももうちょっとラフな格好に着替えたいし」
「そうですね。油とか、洋服につく匂い、ちょっと気になりますし」
買い物袋をそれぞれの部屋に運び、一息ついたあと、ふたりはマンションのエントランスで落ち合った。
真樹はジーンズに着替え、カジュアルなパーカースタイル。
美和子も軽やかなシャツワンピにスニーカーを合わせて、どこか学生のような無防備さがあった。
「じゃ、行こうか」
並んで歩く道は、あたたかな夕陽に照らされている。
マンションの影がゆっくりと長く伸び、オレンジ色の光がふたりの横顔を優しくなぞった。
風が少し涼しくて、だけど心はほのかにあたたかい。
会話はとりとめのないもの。
今日は歩きすぎたとか、試着室の鏡が意外と正直だったとか、
餃子はやっぱりニンニクがある方がいいよね、とか。
そんな何気ないやりとりが、
なぜか胸の奥をじんわりと、柔らかくしていく。
歩くたびに寄り添うように揺れるふたりの距離。
日常の一コマに溶け込む恋心が、そっと芽吹き続けている。
そして、角を曲がると、目当てのラーメン屋の暖簾が見えた。
「……あ、ちょうど空いてるかも」
「タイミングいいな」
ふたりは目を見合わせ、ふっと笑った。