25年ぶりに会ったら、元・政略婚相手が執着系社長になってました
真樹の視線に、応えるように美和子がそっと顔を上げた。
目が合った瞬間、時間がふと、やわらかく止まる。
呼吸が浅くなる。
唇が、わずかに震える。
何も言わないまま、真樹がゆっくりと近づいた。
彼女が逃げないことを確かめるように。
まるで、何か大切なものを壊さないように。
まるで、ずっと前からこの瞬間を夢見ていたように。
唇が触れた。
とてもやさしく。とても静かに。
けれど確かに、そこにあったのは“想い”だった。
美和子の肩の力が抜けていく。
長く張り詰めていた心の糸が、静かにほどけていく。
安心と、受け入れと、どこか照れくささが入り混じるような、柔らかく温かなキス。
「……美和子」
真樹が小さく名前を呼ぶ。
その響きに、胸がいっぱいになる。
「……うん」と小さく頷いて、今度は美和子の方からそっと目を閉じた。
ふたりの世界が、少しずつ、重なっていく。
言葉はなくても、すべてが伝わる。
そんな静かな夜の、心がほどけてゆくようなキスだった。
キスが終わっても、ふたりはそのまま離れなかった。
真樹の額が美和子の額にそっと触れ、彼のぬくもりと呼吸が、すぐそばにある。
「……美和子」
呼ばれるたびに、胸の奥が熱くなる。
真樹の腕が美和子の背中をそっと引き寄せる。
胸元にそっと頬を預けた美和子は、自分の鼓動が高鳴っているのを感じる。
でも不思議と、怖くない。むしろ、心が落ち着いていく。
「……少し飲み直すか」
真樹がぽつりと言った。
美和子はうなずき、ふたりはキッチンへ移動する。
梅酒のグラスを新たに用意して、ぬか漬けと少しのチーズを添える。
テレビもつけず、音楽もかけない。ただ、ふたりの間に流れる空気だけが静かに満たされていた。
「いい夜だな」
グラスを合わせながら、真樹がつぶやく。
「そうですね」
美和子もそっと微笑む。
何度か梅酒を口に運んだあと、真樹はソファに背を預け、グラスをテーブルに置いた。
「ちょっと、横になる……酔ったかもしれん」
「え、大丈夫ですか?」
美和子が心配そうにのぞきこむ。
「んー……少しだけ目を閉じる」
そう言ったまま、真樹はうつぶせ気味に倒れこむようにして、ぴくりとも動かなくなった。
目が合った瞬間、時間がふと、やわらかく止まる。
呼吸が浅くなる。
唇が、わずかに震える。
何も言わないまま、真樹がゆっくりと近づいた。
彼女が逃げないことを確かめるように。
まるで、何か大切なものを壊さないように。
まるで、ずっと前からこの瞬間を夢見ていたように。
唇が触れた。
とてもやさしく。とても静かに。
けれど確かに、そこにあったのは“想い”だった。
美和子の肩の力が抜けていく。
長く張り詰めていた心の糸が、静かにほどけていく。
安心と、受け入れと、どこか照れくささが入り混じるような、柔らかく温かなキス。
「……美和子」
真樹が小さく名前を呼ぶ。
その響きに、胸がいっぱいになる。
「……うん」と小さく頷いて、今度は美和子の方からそっと目を閉じた。
ふたりの世界が、少しずつ、重なっていく。
言葉はなくても、すべてが伝わる。
そんな静かな夜の、心がほどけてゆくようなキスだった。
キスが終わっても、ふたりはそのまま離れなかった。
真樹の額が美和子の額にそっと触れ、彼のぬくもりと呼吸が、すぐそばにある。
「……美和子」
呼ばれるたびに、胸の奥が熱くなる。
真樹の腕が美和子の背中をそっと引き寄せる。
胸元にそっと頬を預けた美和子は、自分の鼓動が高鳴っているのを感じる。
でも不思議と、怖くない。むしろ、心が落ち着いていく。
「……少し飲み直すか」
真樹がぽつりと言った。
美和子はうなずき、ふたりはキッチンへ移動する。
梅酒のグラスを新たに用意して、ぬか漬けと少しのチーズを添える。
テレビもつけず、音楽もかけない。ただ、ふたりの間に流れる空気だけが静かに満たされていた。
「いい夜だな」
グラスを合わせながら、真樹がつぶやく。
「そうですね」
美和子もそっと微笑む。
何度か梅酒を口に運んだあと、真樹はソファに背を預け、グラスをテーブルに置いた。
「ちょっと、横になる……酔ったかもしれん」
「え、大丈夫ですか?」
美和子が心配そうにのぞきこむ。
「んー……少しだけ目を閉じる」
そう言ったまま、真樹はうつぶせ気味に倒れこむようにして、ぴくりとも動かなくなった。