25年ぶりに会ったら、元・政略婚相手が執着系社長になってました
美和子は真樹にメッセージを送った。

――ご心配をおかけしてしまったみたいでごめんなさい。少し遠出していました。2時間以内には帰宅できると思います。おやすみなさい。

送信した直後、即座に既読がつく。
そして、すぐに着信。
驚いて画面を見ると、真樹の名前が表示されていた。

戸惑いながらタップする。

「……もしもし?」

「美和子!無事なのか?今どこにいる?」

低く、しかし切迫感のある声。
胸の奥が、なぜか少しだけ熱くなる。

「○○鉄道の列車の中です。もうすぐ○○駅に着く予定だったんですが、前の列車に不具合があって……遅れています」

「ということは、○○駅で乗り換えか?」

「はい、そうですけど……」

「○○駅に迎えに行く。あそこは改札が一つだから、すぐわかる」

「え?そんな!大丈夫です、自分で帰れますから」

「美和子、俺が迎えに行くと言ったんだ。……わかったな」

その言葉を最後に、通話は一方的に切られた。

「……えっ」

スマートフォンを耳から離しながら、美和子は呆然とする。
何が起きたのか、しばらく理解が追いつかなかった。

困惑と戸惑いと、ほんの少しの……期待にも似た何か。
抑え込んでいた感情が、静かに胸の奥で揺れはじめていた。

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