25年ぶりに会ったら、元・政略婚相手が執着系社長になってました
「……美和子。次からは、連絡してくれ」
真樹の声は低く、真剣だった。
「こんなに心配したのは初めてだ。一日中、気が気じゃなかった」
言葉を選ぶように、ゆっくりと続ける。

「携帯の電源は落とさないでくれ。すぐに返事をくれとは言わない。ただ、君がどこにいるのか、それだけでも知っておきたい」

美和子の手を包み込むように握り、真樹はその目をまっすぐに見つめた。
「……約束だ。いいな?」

静かな迫力に、美和子は思わずうなずきかけたが、ふと胸にわだかまる疑問がこぼれ出た。
「……どうしてそこまで、心配してくれるんですか?」

一拍の間。
すぐさま真樹は目を逸らさずに言い切った。

「愛しているからだ」

その言葉の強さに、美和子は息を呑んだ。
何かを返そうとしたその瞬間——

「それと、もう一つ」
真樹が続ける。
「次は、俺も一緒に行く。お墓参りだって、そば屋めぐりだって、滝を見に行くのも。全部、一緒に行きたい」

「あなたって……ほんと、強引ですね」

あきれたように口にしながらも、美和子の頬には柔らかな笑みが浮かんでいた。
その笑顔を見て、真樹もようやく安堵の表情を浮かべる。

真樹の顔が、ゆっくりと近づいてくる。
美和子は息を呑み、そっと目を閉じた。

その瞬間、唇がふれた。
やわらかく、確かに。
そしてもう一度。角度を変えて、深く重なる。
呼吸が溶け合い、時間がふっと止まる。

真樹の手が、美和子の背にそっと触れた。
優しく撫でるように、包み込むように。
その手のぬくもりが心まで伝わってくる。

「……っ」

思わず漏れた声に、美和子自身が驚いた。
けれど、拒む気持ちはなかった。
その触れ方も、キスも、どこまでも丁寧で、優しかったから。

真樹のキスは、終わりを知らないかのように続いた。
息が苦しくなるほどの熱に、美和子は思わず顔を背けようとした。
けれど、真樹の舌がそれを追いかけて、逃がさない。

「……んっ」

戸惑いと羞恥が入り混じる美和子の反応を、真樹は確かに感じ取っていた。
それでも、彼の手は変わらず背中をやさしく撫で続ける。
指先がまとう布越しに、静かに、そして確かに、彼女の輪郭をなぞっていく。

美和子は、そんな真樹の触れ方に、戸惑いながらも体の奥から熱がこみ上げてくるのを感じていた。
もっと触れてほしい。もっと近くに。
自分でも知らなかった欲が、静かに、けれど確かに目を覚ましていく。

真樹はふと、目を細めてそんな美和子の表情をのぞき込む。
恥じらいながらも受け入れていく彼女の変化を、すべて愛おしいと感じていた。

「……可愛いな」

そっとつぶやきながら、美和子の胸元に手を伸ばす。
布の上から、ふくらみをやさしく包みこむように触れた。

「ん……っ」

小さくこぼれた声に、真樹の目が細く笑む。
声を堪えるその仕草さえ、たまらなく愛しくて——

真樹の指先が、布越しにそっと美和子の反応を確かめる。
その動きには、焦りも力みもない。ただひたすらに、彼女の感覚に寄り添っていた。

美和子は息を詰める。触れられるたび、自分の奥に眠っていた感覚が呼び覚まされていくのがわかる。
声を出すまいと唇をかみしめる彼女に、真樹は顔を寄せ、低くささやいた。

「……声を、聴かせてくれ」

真樹のささやきに、美和子は首を左右に振って応える。羞恥に胸が苦しくなり、涙が滲む。どうしても応えられない。

そんな彼女の瞳を見つめた真樹は、ふっと小さく息を吐き、そっと彼女を抱き寄せた。

「……今夜は、ここまでにしておく」

優しい声だった。無理に求めることはしない、けれど想いは揺るがない。そんな強さと誠実さがあった。

「愛しているよ」
真樹はその一言を残して、美和子の額にやさしくキスを落とした。

「おやすみ、美和子」

そう言って、彼は静かに立ち上がり、自宅へと戻っていった。
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