花嵐―はなあらし―
十和との電話のあと、わたしはエレベーターに乗り10階まで下がると社員食堂へと入った。
日替わり定食と定番定食の名前が並ぶホワイトボードを見て、わたしは即決でメニューを決めた。
今日は定番のオムライスにしよう。
窓口でオムライスを注文し、それからわたしは自販機でカフェラテを買い、窓際の席へとついた。
すると、「見つけた。」と言う声が聞こえ、ふと振り向く。
声ですぐに分かったが、振り向いた先に居たのは、オボンに日替わり定食の豚カツを乗せた修ちゃんだった。
「あ、修ちゃん。お疲れ!」
テーブルにオボンを乗せ、わたしの隣の椅子に座る修ちゃんは「体調大丈夫?昨日は珍しくビール飲んだから、具合悪くなったりしてない?」とわたしを気遣ってくれた。
「うん、朝はちょっと身体怠かったけど、今はだいぶ軽くなったよ!」
「そっか、それなら良かった。」
修ちゃんはそう言うと、割り箸を綺麗に二つに割り、「頂きます。」と手を合わせていた。
「そういえば、新社長の就任式、来週あるんだね。ホテル貸し切りでやるなんて、さすがだよね。凄いなぁ〜。」
わたしはそう言いながら、冷たいカフェラテが入ったコップを両手で包み、口へと運んで一口飲んだ。
「うん、新社長の就任式だからね。やっぱり貸し切りにするよね。」
「秘書課は皆、ホテル泊まるの?」
「多分そうなるかな。最後まで社長や役員の人たちとのお付き合いがあるからね。」
「だよね、大変だね。」
「まぁ、仕方ないよ。それも仕事の内だから。」
そう言って修ちゃんは、定食の味噌汁を飲んだ。
「就任式って言っても、最終的には全社員が集まるパーティーなんだから、ここぞとばかりに修ちゃんにたくさん女性社員たちからお声が掛かるんじゃない?」
「んー、だとしても俺にその気はないから。」
「本当に?綺麗な人、たくさん居るじゃん。」
「そうかなぁ。まぁ、俺は涼花に良い人が見つかるまで恋愛するつもりないから。」
「え、何で?」
「涼花が心配だから。涼花の幸せそうな姿を見るまで安心出来ない。」
修ちゃんはそう言うと、豚カツを一切れ箸で掴み、口へと運んでいた。
「え、じゃあ、それってわたしのせい?」
「いや、涼花のせいとかじゃなくて、俺が心配なだけ。まぁ、良い人が見つからなかったら、俺がもらってあげるから安心して。」
「またぁ〜、修ちゃんはそうゆう事言って。わたしなんかに修ちゃんは勿体無いよ。秘書課の王子だもん。」
そう話していると、わたしのオムライスが出来上がったようでベルで呼ばれ、わたしが取りに行こうとすると、「俺が行くよ。」と代わりに修ちゃんが取りに行ってくれた。