花嵐―はなあらし―
そして、修ちゃんが十和に電話をかけてから15分後、十和が修ちゃん宅に到着した。
「お疲れ〜!ビール買って来たぞ。」
そう言ってやって来た十和の片手には、6缶パックの缶ビールが入ったレジ袋が下がっていた。
十和に会うのは、ちょっと久しぶりだ。
相変わらずの穏やかで柔らかい雰囲気にわたしは安心する。
ミルクティーカラーにソフトツイストの髪型はずっと変わらず、バンドの練習後の為か初夏の暑さの為か、ほんのりと汗を滲ませていた。
「涼花、久しぶり!」
そう言ってわたしに微笑みかける十和に、わたしは立ち上がって歩み寄り、178センチある十和を見上げた。
「十和って、ケツ派?!」
突然のわたしの問いに「、、、はっ??」と戸惑う十和。
その様子を見て、修ちゃんはクククッと一人笑っていた。
そして、その問いの意味を説明し、再度「十和は、どっち派?」と訊くと、十和は迷いなく「ケツ派だな。」と答えた。
「良かったぁ〜。胸派って言われたら、絶交するとこだった。」
「何でだよ。」
「だって、巨乳好きはわたしの敵だから!」
「んー、でもさ、胸が嫌いな男なんて居ないと思うよ?問題なのは、大きさを重視する奴がいるってことだろ?胸の大きさで女を選ぶ奴なんて、碌でも無い奴なんだから、やめとけよ。」
十和がそう言うと、わたしの後ろでベッドに頬杖をしながらビール待ちをしている修ちゃんが「それ、俺も言った。」と言い、「十和さん、ビール早く〜。」と催促していた。
「はいはい。ってか、お前らいつから飲んでんの?空き缶の数、半端ねぇな。」
そう言いながら、わたしの頭をポンッと優しく叩き、それから修ちゃんにビールを差し出す十和。
修ちゃんは6缶パックでは不満だったようで「もっと買って来てくれても良かったのに。」と言い、十和が差し出したビールを受け取り、レジ袋からビールを取り出した。
「修一は飲み過ぎなんだよ。お前なんてザルだから、ビールがあれば永遠と飲んでんじゃん。」
「十和さんがお酒弱いだけでしょ。2缶も飲めば酔って寝ちゃうもんね。」
そんな二人の会話を聞きながら、わたしは修ちゃんのベッドに腰を掛け、そのまま倒れ込んだ。
「胸が嫌いな男なんて居ない、かぁ、、、」
わたしがそう呟くと、十和は「あ、涼花、勘違いするなよ?俺は別に胸が好きって言ったわけじゃないからな!」と慌てるように言った。
「でも、嫌いじゃないんでしょ?」
「そりゃあ、嫌いじゃないよ?ただ、大きければいいってもんじゃなくて、好きな人なら、大きくても小さくても、大きさは関係ないってこと!」
十和の言葉にわたしは「ふ〜ん。」と、何だか納得いくような、いかないような気持ちで返事をして、ベッドに倒れ込んだまま天井を見つめていた。