響け!月夜のアジタート
笑って 笑って 偽物の光を浴びて
赤に染まった薔薇も 燃え盛る火の輪も 何も怖くはないから
緞帳が下りるまでサーカスに終わりはない
最後まで僕は踊るだけさ
女性は歌い、軽やかに踊る。その動きと歌からレオンハルトは瞬きも忘れ、呼吸すらも忘れてしまっていた。しかし、一つだけ気になることがあった。
(彼女、リズムと足のステップが合っていない)
女性はステップを時折り踏んでいた。しかし、曲のメロディーやリズムに合っていない。そこだけがレオンハルトは引っ掛かったものの、素晴らしい歌声にすぐにかき消されてしまう。
女性は歌い終わると頭を下げる。歌が始まる前よりも大きな拍手が舞台中に響いた。
「とても素敵な歌だったわ!!」
「あれで有名歌手じゃないっておかしいだろ!!」
マーガレットとアントーニョが興奮気味に話す。カナタは目に涙を浮かべ、オルハンは強く拳を握り締めていた。
「素晴らしい歌声だ。こんな歌を私は初めて聴いたよ」
レオンハルトの胸の高鳴りは、舞台を出ても続いていた。そんなレオンハルトたちを、何者かが舞台の袖から見つめていた。