響け！月夜のアジタート
そう言い、喚き散らすアントーニョを引きずってフロントからレオンハルトは離れた。カナタとオルハンも後に続く。

「これからどうするつもりだい？」

「そうだぞ！！あいつ、一回ぶん殴らないと気が済まねぇ！！」

オルハンが拳を握り締める横で、アントーニョが怒りを隠さずに大声を出す。レオンハルトはふと視線を感じて横を見る。通路の奥に誰かがいた。スカーフを首に巻いたフョードルだ。

目が合うとフョードルは気まずそうに後ずさり、背を向けて逃げようとする。レオンハルトはすぐに呪文を唱えた。

「オーダ！」

レオンハルトは一瞬でフョードルの前に移動する。彼は目の前にレオンハルトが現れたことに驚いた様子で口を手で覆っていた。その態度にレオンハルトは疑問を覚える。

「おはようございます、フョードルさん。突然申し訳ありません。実は、大切な仲間が行方不明になってしまったんです」

レオンハルトの言葉にフョードルの目が見開かれる。しかし、その口は固く閉ざされたままだ。
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