世界がラブソングを知ったなら
「じゃあ行こうか。」

「本当、すみません。」

「何で謝んの、ほら行くよ。」



そう言って頭を下げると須藤さんはそう言って、ピンっと私のおでこを弾いた。




なぜ私は帰り道を彼と一緒に歩いているのか。



その問いの答えは、ほんの数分前に遡る。




遡ること、5分前―----。




≪19歳女子大生が暴行事件の被害に遭いました。被害に遭った女性は、人通りの少ない道を歩いていたとのことです。女性は……≫




『また物騒なこと起きてんなぁ。』

『怖いですね…。』



テレビで流れていたニュースを中野さんと見ていると、そんな痛ましいニュースが流れ来て2人で、怖いねとそんな話をしていた。




『私も通る道だな……。』

『……。』



いつも帰る時に使っていた道で、そんなことが起きたなんて。



1人で帰るの怖いな…。





‥タクシーでも使って帰る?

いや、でもバイト帰り毎日タクシーを使えるほどリッチじゃない。




『2人して何難しい顔してんの?』

『‥あ、聖の家ってゆずちゃんの家と近いよね?』

『いや、知らないけど。そうなの?』

『そうなの。でさぁ、今物騒なこと起きてんじゃん?』

『あぁ、あのニュースね。』

『ゆずちゃん1人で帰るの危ないし、一緒の方向だから送ってあげて。』




そんな会話が私抜きで行われて、彼が私を家まで送ることになった。


「本当にお家こっちなんですか?」

「こっちだって。嘘つく必要なんてないでしょ。」

「そう、ですけど…。」



やっぱり何だか申し訳ない…。




申し訳ないが、少しでも一緒に居れる時間が増えて嬉しいとも思ってしまう。




顔が見れるだけで嬉しかったのに、隣に居たいなんて欲張りなことを思っちゃう私はもうきっと深く深く堕ちてしまっている。





「それに、送らないと心配だし。」

「え?」

「翠ちゃんがあんな事件の被害に遭うなんてことになったら絶対に嫌だしね。」

「……。」

「だから。俺の心配を減らすためにも、黙って送られときなさい。」

「須藤さん…。」



何、それ。





「返事は?」

「はい……。」




ズルい、ズルすぎる。





「ん、よろしい。」


ポンポン、と私の頭を撫でた彼の手の温度が泣きたくなるくらい優しい。





「っ……、」




これ以上、好きにさせないでよ。
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