世界がラブソングを知ったなら
「すどう、さん…。」


教えてもらった名前をポツリと呟いてみると、ふわんと漂った香りが、鼻を掠めた。



「呼んだ?」

「うわぁ?!」


呆けていた私の前に差し出されたのは、さっき頼んだココア。


彼の声が聞こえて思わず振り返ると、「ん?」と小首を傾げた彼が居た。




「びっくりさせちゃってごめんね。でも、俺の名前呼んだでしょ?」

「え、あ、いや、あの…、」




まさか聞かれてるなんて…!


独り言のつもりで呟いた言葉が聞かれてるなんて…!

しかも名前呟いてたなんて…!



何とか誤魔化そうと言葉を探してみるけれど、急なことに頭が追いついていないから言い訳さえできない。



思わずのんちゃんに助けを求めると、やれやれとでも言いたげな顔でため息をつかれてしまう始末だ。




「すみません、追加で注文いいですか?」

「かしこまりました。」



何だかんだ助け舟を出してくれた彼女に、心の中で手を合わせてありがとうを送った。




た、たすかった…。



ふぅ…っと息を吐いて差し出されたココアを飲むと、口いっぱいに甘い香りと味が広がって、何だか幸せな気分になった。
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