世界がラブソングを知ったなら
「翠ちゃんの仕事は、オーダー取ってレジするのが基本ね。」

「分かりました。」



オーダーの取り方とかレジの操作方法を須藤さんから教わりながら、それをメモしていると中野さんに名前を呼ばれた。




「ゆずちゃんは、赤ね。」

「赤…?」

「はい、コレ。」



そう言って渡されたのは、白いシャツ数枚と赤いエプロン。



「一応、制服だよー。」

「わぁ、ありがとうございます!」

「白いシャツ渡してるけど、別にそれじゃなくていいからね。」

「え?」



渡されたそれを受け取ると、中野さんが白いシャツは強要じゃないと言う。




「俺も聖も好きなの着てるから、ゆずちゃんも好きなの着なね?」



その黄色いブラウス可愛いしとサラッと褒め言葉を落として、木漏れ日のように優しい笑顔を浮かべた。



「そのままエプロンだけ着なよ、ココは基本的に自由だから。」

「あ、はい!」

「それじゃあ、オーダー取れたら俺か中野さんに持ってきて。」

「分かりました!」

「いい返事。」


貰ったエプロンを着けていた私を見て、クスッと静かな笑い声を零した須藤さんは、ポンと私の頭を撫でて。




「分かんなかったら、いつでも聞いて。」


そう言って厨房に入って行った。





「頭、なでられた…。」



彼の手が触れた場所にもう一度自分で触れてみると、自然に頬が緩んでしまう。




ドキドキ…と鼓動が加速しているのは、彼に恋をしているからだ。




嬉しさと恥ずかしさの感情が混じり始めた時、カランカラン…っと扉が開く音がした。





「あ、いらっしゃいま、せ…って、え?!」

「ふふ、来ちゃった。」




扉の前に居た人に驚きの声を上げると、当の本人は無邪気な笑顔を浮かべてピースサインをした。
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