世界がラブソングを知ったなら
「のんちゃん!」
「エプロン、似合ってるじゃん。」
「どうしたの?今日撮影って…、」
席に案内しながら彼女にそう問うと。
「向こうの都合で明日になったの。」
「そっか。」
やっぱり綺麗な笑顔で笑う。
綺麗だな、本当に。
「翠の頑張ってるところ見ようかなと思って来てみたの。」
「ありがと、のんちゃん。」
ちょっと照れくさくてへらっと笑ってみせると、
彼女は静かな笑い声を零した。
彼女の耳についていたピンクゴールドのピアスが、ゆらり、と揺れた。
「あ、ご注文は!」
「そうだなぁ、じゃあ店員さんのオススメは何ですか?」
「オススメ…。」
彼女のその問いに、浮かんだ答えはただ一つだけ。
「ココア…。」
「うん?」
「ココア!本当に美味しいの!」
「ふぅん、そっか…。じゃあ、それにしよっかな。」
「かしこまりました!」
須藤さんが淹れてくれた、甘くておいしいとびきりのココア。
「ふふ…。」
伝票に書いたココアの文字を指で撫でてみると何だか嬉しくなって、無意識に笑みが零れた。
厨房に居たのは、中野さんと須藤さん。
「あの、須藤さん。」
「あ、オーダー取れた?」
厨房の入り口の近くに居たのは中野さんだったが、私は無意識に彼の名前を呼んでいた。
「あの、ココア、お願いします!」
「はいよー。」
キュッと唇の端を上げたその笑顔は私の胸を弾ませるのには十分で、きゅん、と甘酸っぱい音を立てて跳ねた鼓動は、私の体温を上げるのには十分だった。
「ふふ、ゆずちゃん顔赤いよ?」
「へ…っ?!」
須藤が厨房の奥に入って行ったのと同時に、表に出てきた中野さんが私にそう声を掛けたせいで、素っ頓狂な声が出てしまった。
「俺もココア淹れられるんだけどなぁ。」
「え、いや、あの…。」
「絶対聖より上手く淹れられるんだけどなぁ。」
「……。」
返す言葉が見つからないとは、こういうことか。
何となく、中野さんは理由を分かっている気がする。
「聖が淹れたココアは、ゆずちゃんを虜にしちゃったみたいだねぇ。」
「へ…。」
「味覚も、心も、支配しちゃってるみたいだね。」
「え、あの…っ、」
彼は、楽しそうに笑う。
「ふふ、青春だね。」
柔らかい笑顔の中に、ほんの少し意地悪な色を滲ませて。
「エプロン、似合ってるじゃん。」
「どうしたの?今日撮影って…、」
席に案内しながら彼女にそう問うと。
「向こうの都合で明日になったの。」
「そっか。」
やっぱり綺麗な笑顔で笑う。
綺麗だな、本当に。
「翠の頑張ってるところ見ようかなと思って来てみたの。」
「ありがと、のんちゃん。」
ちょっと照れくさくてへらっと笑ってみせると、
彼女は静かな笑い声を零した。
彼女の耳についていたピンクゴールドのピアスが、ゆらり、と揺れた。
「あ、ご注文は!」
「そうだなぁ、じゃあ店員さんのオススメは何ですか?」
「オススメ…。」
彼女のその問いに、浮かんだ答えはただ一つだけ。
「ココア…。」
「うん?」
「ココア!本当に美味しいの!」
「ふぅん、そっか…。じゃあ、それにしよっかな。」
「かしこまりました!」
須藤さんが淹れてくれた、甘くておいしいとびきりのココア。
「ふふ…。」
伝票に書いたココアの文字を指で撫でてみると何だか嬉しくなって、無意識に笑みが零れた。
厨房に居たのは、中野さんと須藤さん。
「あの、須藤さん。」
「あ、オーダー取れた?」
厨房の入り口の近くに居たのは中野さんだったが、私は無意識に彼の名前を呼んでいた。
「あの、ココア、お願いします!」
「はいよー。」
キュッと唇の端を上げたその笑顔は私の胸を弾ませるのには十分で、きゅん、と甘酸っぱい音を立てて跳ねた鼓動は、私の体温を上げるのには十分だった。
「ふふ、ゆずちゃん顔赤いよ?」
「へ…っ?!」
須藤が厨房の奥に入って行ったのと同時に、表に出てきた中野さんが私にそう声を掛けたせいで、素っ頓狂な声が出てしまった。
「俺もココア淹れられるんだけどなぁ。」
「え、いや、あの…。」
「絶対聖より上手く淹れられるんだけどなぁ。」
「……。」
返す言葉が見つからないとは、こういうことか。
何となく、中野さんは理由を分かっている気がする。
「聖が淹れたココアは、ゆずちゃんを虜にしちゃったみたいだねぇ。」
「へ…。」
「味覚も、心も、支配しちゃってるみたいだね。」
「え、あの…っ、」
彼は、楽しそうに笑う。
「ふふ、青春だね。」
柔らかい笑顔の中に、ほんの少し意地悪な色を滲ませて。