オリーヴィア様は薔薇が好き。


呼ばれた私は、周りにいらっしゃる殿方にお辞儀をしてからオリーヴィア様の後に続きました。
途中退室ですが、夜会はお母上のミーナ様がなんとかしてくださるので大丈夫でしょう。

それにしてもオリーヴィア様、早足ですね。
もう奥まで来てしまいました。
ここはオリーヴィア様が暮らす宮殿なので、奥にはオリーヴィア様の私室があります。
そこはお客様はもちろん、私のようにお仕えする人間ですら特別な許可がなければ入室できないプライベートな空間なのです。

私は幸い、特別な許可がおりている者の一人なので堂々とオリーヴィア様の部屋までついて行きました。

「ロザリー、オペラを観に行くの?」

寝室へ入り、二人きりになったところでオリーヴィア様がおっしゃいました。
なんだかピリピリしていらっしゃるような……。
目付きが鋭いです。

「オリーヴィア様!笑顔!笑顔が大事ですよ!」

「話をそらさないでちょうだい。オペラ、行くの?あの男と、二人で?」

「その……いけなかったでしょうか……?」

「べつに、いいわよ。行けばいいじゃない」

わざとらしく頬を膨らませ、ぷいっとそっぽを向くオリーヴィア様。
腕まで組んで、これは完全に拗ねていらっしゃるご様子。

「怒っていらっしゃいますか?」

「そりゃあ怒るさ!ほいほいとデートの約束するなんて!しかも()の目の前で!」

あ、素が出た。と思った瞬間、オリーヴィア様に抱き締められました。
私よりも背が高く、腕の力も強いオリーヴィア様に。
ギュッと。

「俺だって、ロザリーと二人で出掛けたい」

「この前、演劇を観に行ったじゃないですか」

「オリーヴィアとして、だろ?男の俺とは……エリアスとは、一度もない」




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