家族に支度金目当てで売られた令嬢ですが、成り上がり伯爵に溺愛されました
帰り道。会場の外では、煌びやかな馬車がいくつも並んでいた。

金の装飾に紋章入りの天蓋、毛並みの整った馬が引く馬車ばかりだ。

もちろん、ルシアにも立派な馬車が迎えに来ていた。

「まあ、お姉様。もしかして……お迎えが来てないの?」

ルシアは楽しそうに唇を吊り上げる。

まるでそれが当然とでも言うように。

その時、ひときわ地味な馬車が会場前に到着した。

飾り気のない、だが丁寧に手入れされたグレイバーン家の馬車だ。

「ごめんなさい、気づかなかったわ。」

そう言いながら、ルシアは笑いを堪えるように肩を震わせていた。

「ねえ、お姉様。」

「なに?」

「本当に来てよかったの?今日の舞踏会。」

その言葉に、私はふと口を閉ざす。

胸の奥が、静かに痛んだ。

言い返したいことはいくつもあった。

けれど、言葉は喉の奥で留まり、私は何の返事もできなかった。
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