家族に支度金目当てで売られた令嬢ですが、成り上がり伯爵に溺愛されました
屋敷に戻ると、食堂の扉が開いていた。

中へ入ると、そこにはテーブルに肘をついて待つセドリックの姿があった。

「どうして待っていたの? 先に食べていてよかったのに。」

私が席に着くと、彼はナイフとフォークを静かに手に取りながら、私の顔をじっと見つめた。

「君を待っていたんだよ。せっかくの舞踏会の夜だから、二人で食べたいと思って。」

そんなふうに言われて、胸が温かくなった。

けれど、彼は私の笑顔の裏にある不安を見抜いていたらしい。

「舞踏会、どうだった?」

「ええ、楽しかったわ。」

それは本当。

エミリアやリリアンと久しぶりに再会し、笑い合えたのは素直に嬉しかった。

けれど、その裏でルシアの言葉や態度が、ずっと胸に刺さっていた。

「元気がないね。」

セドリックは穏やかにそう言った。

その優しさが、胸に沁みる。彼には、私の小さな変化すら分かるのだ。







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