家族に支度金目当てで売られた令嬢ですが、成り上がり伯爵に溺愛されました
その時、会場がざわついた。人々が次々に動きを止め、恭しく頭を下げていく。

私もセドリックと目を合わせ、つられるように頭を下げた。

「アルバート・フェルゼン王子のおなりです。」

声高に告げられた名に、空気が張りつめる。カッ、カッと硬い靴音が床に響いた。王族の登場らしく、威厳のある足音だった。

だが私はそっと顔を上げ、その姿を目にした瞬間、思わず目を見開いた。

(この方が……ルシアの婚約者?)

王族といえば、端正な顔立ちに気品を備えた美男子の印象がある。

それなのに、そこに現れたアルバート王子は、どこかぼんやりとした顔つきで、背も高くなく、しかも太めの体型。

顔の造りも整っているとは言いがたく、社交界で噂されていた“不細工な王子”という言葉を、思わず信じてしまうほどだった。

それでも、王子の背筋は伸びており、歩みに迷いはなかった。

ゆっくりと、確実にルシアのもとへ向かっている――まるで彼女しか見えていないように。

私はその視線の熱に、なぜかぞっとした。
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