家族に支度金目当てで売られた令嬢ですが、成り上がり伯爵に溺愛されました
「ルシアは、恥ずかしがりやだな。」

アルバート王子は、先ほどルシアに丁寧に拒絶されたことなど意にも介さぬ様子で、にやりと笑いながらつぶやいた。

その表情はまるで、恋に夢中な少年のよう――だが、王族でありながら空気を読まないその態度に、私は思わず口を開いたまま呆然としてしまう。

必要のない、いやむしろ厄介な前向きさ。

(この人……すごい意味で手強いわ)

そう思った次の瞬間、彼の視線がふとこちらへ向いた。

「……ん?」

私と目が合ったのだ。にこりと笑うアルバート王子。その笑顔に、なぜか全身がぞくっとした。

「そちらの方は?」

王子が私に向かって歩いてくる。

(うそ、こっち来るの……!?)

周囲の視線が再び集中する中、私は何とか微笑みを作りながら、背筋を伸ばして迎えるしかなかった。
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