家族に支度金目当てで売られた令嬢ですが、成り上がり伯爵に溺愛されました
「君、綺麗だね。」

王子のその言葉に、私は背筋が凍るような感覚を覚えた。

この顔を「綺麗」と言ったのは、今までセドリックただ一人。

だが今、その言葉を投げかけてきたのは、妹・ルシアの婚約者になるかもしれない――アルバート・フェルゼン王子。

その事実に戸惑いながら、私は何とか笑顔を作って応じた。

「ルシアの姉、クラリスと申します。」

できるだけ丁寧に、穏やかに。無難にその場を切り抜けようと、口角を引き上げた。

だが、逆効果だったようだ。

「ルシアのお姉さん、いいね。」

まるで品定めをするような視線。悪気はないのかもしれないが、あまりに無神経で、無遠慮で――その笑顔が、ひどく不快だった。

(お願い、ルシア。早く戻ってきて……)

胸の奥で、そう叫ぶしかなかった。

私は妹の婚約者に、明らかに興味を持たれてしまったのだから。







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