家族に支度金目当てで売られた令嬢ですが、成り上がり伯爵に溺愛されました
「ルシアのお姉さん、一曲踊る?」

差し出されたアルバート王子の手は、まるで物を差し出すような雑さだった。だが、相手は王子。貴族社会において、その誘いを断ることは――ほとんど不可能に近い。

(どうしよう……)

一瞬ためらったその時、私の前にセドリックが静かに立ちはだかった。

「アルバート王子。クラリスは私の妻です。」

その声には冷静な響きと、隠しきれない怒気があった。

「だから? 俺は王子だぞ?」

アルバート王子は眉をひそめて、まるで子供のように反論する。だが、セドリックは一歩も引かずに言い放った。

「王子だからこそ、節度が大事なのでは?」

その言葉には、場の空気さえ変える力があった。

一瞬の沈黙の後、アルバート王子はふんと鼻を鳴らし、一歩後ずさって踵を返した。

「……つまらない男だな。」

そう呟きながら。

私はセドリックの背中を見つめ、心の奥が温かくなるのを感じた。

(私のことを、守ってくれた)
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