家族に支度金目当てで売られた令嬢ですが、成り上がり伯爵に溺愛されました
彼は警戒心を隠そうともせず、椅子から身を起こす。

「お願い、お兄様。ルシアを、あの王子との婚約から助けてぇ……」

袖を引く仕草は甘える妹のようでいて、どこか芝居がかっていた。

その場の空気に、私は息を呑んだ。

セドリックがどう出るか——その目が、静かにルシアを見据えていた。

「お願い、お兄様……ルシア、困ってるの……」

そう言いながら、ルシアはセドリックの袖に手をかけ、潤んだ瞳で見上げていた。

セドリックは困惑した表情で、私の方に視線を向けてきた。

私が頷くと、彼は静かに席を勧めた。

「だが、王子との結婚を断れば君は、立場を失いかねないぞ。」

セドリックの言葉は冷静で的確だった。

確かに、王族との縁談を断ることは、公爵家にとって大きな損失になりかねない。

「他に誰かいい人がいたら、話は別だけどな。」

彼はやんわりと、他の選択肢を探すよう促す。
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