家族に支度金目当てで売られた令嬢ですが、成り上がり伯爵に溺愛されました
「まぁ、成り上がりの伯爵よね? 本当に結婚するの? お姉様が?」

ルシアの無邪気な声が、私の背中に突き刺さる。

彼女には悪気がない。――でも、それが一番残酷だった。

「ルシア、無礼なことを言わないの」

お母様は軽くたしなめたが、その声に怒気はなかった。

「だって不思議じゃない?」

ルシアはまた、まるでお菓子でも食べているかのように軽やかに言葉を継いだ。

「グレイバーン伯爵って、なかなかハンサムな方よね? 背も高くて、あの瞳の色、少しだけ青が混ざっていて――素敵だったわ」

私は返事をしなかった。ただ黙って、階段の手すりを握りしめていた。

「それこそ、お金に糸目をつけずに、美人で教養のある令嬢を選べる立場なのに……」
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