家族に支度金目当てで売られた令嬢ですが、成り上がり伯爵に溺愛されました
するとお父様とお母様が、足音も荒く駆け寄ってきた。まるで、救世主に出会ったかのような顔つきで――

「グレイバーン伯爵!」

先ほどまでセドリックを“あの成り上がり”と呼んでいた人たちとは思えぬ声色だった。

「どうぞ、こちらに!」

と促され、案内されたのは執務室ではなく、かつてお客様用として使われていた応接室。

だが、家具は古び、カーテンには埃がかかっていた。

お母様はまだ美しさを保っていたが、その姿に気品はなく、どこか哀れで――私は言葉を失った。

「我々を……助けに来てくれたのだな?」

「さすがは、グレイバーン伯爵だわ。貴族の鑑ですわ!」

両親はすっかり興奮し、喜色満面だった。だがその様子は、まるで救いを乞う民と、それを前にした領主のようで――

私は胸の奥に冷たいものを感じた。

セドリックは静かに頷きながら、何も答えなかった。







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