家族に支度金目当てで売られた令嬢ですが、成り上がり伯爵に溺愛されました
「……分かった。無理はしないでくれ。」

私はうなずき、もう一度だけ彼の手を握りしめると、応接室のドアを開けて中へと入っていった。

中では、両親とルシアがまだ口論の余韻を残していた。

「お父様、お母様。少しだけ、私の話を聞いていただけるかしら。」

私の声に、空気がわずかに張り詰めた。ルシアはむくれた顔でそっぽを向き、お父様は腕を組んだまま私を見た。

「……なんだ。」

「グレイバーン伯爵家は、これ以上エルバリー家に関わるつもりはありません。」

私の静かな言葉に、三人の顔色が変わった。

けれど私は、もう迷わなかった。

ここで、けじめをつける時だと分かっていたから。

「もうこれ以上、セドリックを傷つけないで。」

私はこらえていた涙が、ついに頬を伝ってこぼれ落ちた。
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