家族に支度金目当てで売られた令嬢ですが、成り上がり伯爵に溺愛されました
すると背中に怒鳴り声が飛んできた。

「この薄情者!」

ルシアだった。目を血走らせ、唇を震わせながら私に牙を剥いた。

「家族を見捨てるなんて、人としてどうなの!?」

私はゆっくりと振り返る。そして、震える声で答えた。

「人としてどうにかしているのは、あなた達の方よ!」

「はあ?なにそれ?伯爵家ってそんなに偉いわけ?」

ルシアは鼻で笑い、侮蔑の視線を私に投げつけた。

私は言い返さなかった。胸が苦しくて、言葉が出なかったのだ。

その沈黙を、ルシアは勝手に勝利と解釈したのか、声を張り上げた。

「お金を出すしか、あなた達が役に立つ時なんてないじゃない!」

あまりに醜い言葉に、私は口元を押さえて目を閉じた。

涙は、もう枯れていた。
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